まこのほけんしつ

保健室・養護教諭のあれこれ

養護教諭を目指すには、教育学部に進んだほうが有利なのか?学部学科選びのポイントをご紹介

 

 養護教諭を目指すための大学や専門学校選び。教育学部養護教諭養成課程)に進むのか、看護・保健系の学部か、それ以外の学部に進むのかで悩む人もいると思います。教員採用試験に有利なのはどの学部なの?と疑問に思う人もいるかもしれません。実は、特定の学部や学科を選んだからといって、教員採用試験に合格する可能性や養護教諭の仕事内容は変わりません。しかし、大学で学ぶ内容によって、その人の養護教諭としての強みやアピールポイントが変わってくることはたしかです。私は、看護科へ進み、看護師免許と養護教諭一種免許を取得し、養護教諭になりました。その経験をふまえながら、それぞれの進路でのメリットなどをまとめてみました。私も進路については悩みましたが、迷っている人にとって、進路を決めるヒントになればいいなと思います。ぜひ最後までご覧ください。

 

この記事はこんな人におすすめ♪

養護教諭を目指しているが、どの学部学科に進んだらいいのか悩んでいる人

 

養護教諭になるには養護教諭免許状が必要!

 養護教諭になるには養護教諭免許状が必要です。これを取得するために学校に行き、所定の科目を履修します。養護教諭になるためには、指定の養成機関へ進んで専門教育を受ける必要がありますが、最近では通信制の大学もあり、選択肢としてはいくつもあるようです。免許状は、一種免許状二種免許状専修免許状の3つに分かれますが、いざ現場に出て仕事内容に違いはありません。しかし、給与の面やキャリアアップの面で少し細かい違いがあります。

 

 養護教諭を目指せる大学や学部はこちらにまとめた資料があるのでご覧ください。

養護教諭を目指せる学校

引用:令和4年4月1日現在の教員免許状を取得できる大学:文部科学省 (mext.go.jp)

 

 教育学部や看護科はイメージとして持ちやすいですが、養護教諭を目指せる学科はこんなにもあるんですね。通信制の学校もあり、同じ養護教諭免許状を取得するのにもこのように様々な選択肢があります。

 

それぞれの学部のメリット・考えておきたいポイントを紹介

 卒業して取得できるのは同じ養護教諭免許状ですが、それぞれの学部・学科で強みや力を入れている分野は違います。今回は、教育学部養護教諭養成課程②看護・保健系③心理学・福祉学系のおおまかに3つに分けて、それぞれの学部学科から養護教諭を目指すメリットと、考えておきたい点をまとめてみました。私は②のパターンから養護教諭になったので、②がボリューミーな内容になっています。

 

教育学部養護教諭養成課程

★メリット

 子どもの成長発達過程や心理、子どもとの接し方をはじめとする「教育論」を中心に学びたい人は、教育学部を目指すと良いでしょう。現場でメインに対応することになる、児童生徒(幼児)について、一番即していて実践につながりやすい内容を学ぶことができるはずです。また、特定の科目や実習を履修することで、中学校一種免許状(保健)、高等学校一種免許状(保健)が取得できる学科もあります

 学校や教育について深く学ぶことができ、教育実習なども充実しています。現場の養護教諭から直接学ぶことが多いため、就職したときも、学んだことを現場でスムーズに活かして働くことができるのは有利だと感じます。また、教育学部で学んだ学生は、子供とのかかわり方や指導の仕方にも慣れており、子どもにあった教材や教具などの知識も、他学科と比べると豊富なのではないでしょうか。

 

★考えておきたいポイント

 看護学や小児医学など、病気やけが、身体のしくみについて、もちろん勉強すると思います。しかし、看護系の学部では、赤ちゃんからお年寄りまで、身体や発達・機能の特徴、病態についてをメインに学ぶことになるので、そちらの専門性では少しもの足りないと感じることがあるかもしれません。

 また、養護教諭養成課程は全国で7か所しかなく、まずはそこに入るための競争率はそれなりに高いかもしれません。そのほかにも、養護教諭養成課程に限らず、教育学部で学ぶ学生のなかには、最終的に一般企業に就職する人も少なくありません。教員採用試験合格も決して簡単ではないので、合格できなかった場合の進路についても考えておきたいものです。

 

②看護・保健系の学部

★メリット

 看護系の学部の学生は、急性期の患者や重症患者の、刻々と症状が変化する様子やその対応の仕方を実習でもみています。そのため、学校現場での緊急時にも冷静な観察や判断ができるのではないかと考えます。病態や身体のしくみを解剖学的、科学的に深く学んでいるため、症状や対応について、より具体的に説明することができ、そのことは教員や保護者からの安心感や信頼にもつながるはずです。また、赤ちゃんからお年寄りまで、様々な健康課題を持っている人の支援の仕方を実践的に学ぶので、保健指導の機会には、その場で一時的なものではなく、将来にもつながりを持った視点が活かせるのではないかと思います。何より、看護師免許が取得できるのは大きなメリットです。教員採用試験に合格できなくても、養護教諭以外の働き口で困ることはなさそう。大学に入ってみて、難しそうだったら看護師でもいいかな!と思っている人にとっては、良い選択かもしれません。看護師免許と保健師免許の2つを取得できる大学もあります(とってもハードですが・・・)

 

★考えておきたいポイント

 看護系の学部は、あくまで看護師になるための授業や実習がメインです。長期間にわたる病棟実習では、養護教諭が働く「学校」とは、イメージが結び付けづらく、そもそもモチベーションが下がってしまう人もいるそうです。対象者の困りごとをアセスメントして、いろんな人と連携しながらサポートしていくという、やっていることは本質的に一緒ですが、環境は全然違うし、「学校」という組織をあまり知る機会はありませんでした・・・。

 看護学生は、勉強に実習に国家試験に、一般的な大学生からすると、「忙しい」と言われます。これをあたりまえにこなしたうえに、養護教諭になるための勉強や実習をするので、そもそも本当に忙しいです。授業のコマ数や4年間のカリキュラムを見て、しかも倍率の高い教員採用試験も勝ち抜いて・・・と入学当初に説明を受けると、多くの人は諦めます(笑)「ついでに養護教諭の免許も取れたらラッキーじゃん!」って考えている人には正直難しいと思います。私もですが、看護系学部で教職(養護教諭)を履修していた人は、最初から養護教諭になる気で入学してきている人がほとんどでした。さらに、教職を学べる学校に入学しても、そもそも教職が履修できるのは「若干名」としている学校もあり、希望者が多いと、それを絞るための試験や選考がある場合も。私もこれを経験しましたが、1・2回生の成績や面接試験などをふまえて選考がありました。これを勝ち抜かないと、そもそも養護教諭免許状を取得するための授業さえも受けることができない・・・という事態になるので注意が必要です。私が通った大学では、人数制限は教育実習の受け入れ先の関係だと言っていました。確実に養護教諭免許状が欲しいのなら、人数の制限がない学校を選ぶ必要があると感じます。

 看護師志望の友人が遊びやアルバイトに励んでいたり、看護師国家試験の勉強をしたりしているなかで、周りに流されず、自分のペースでどちらも両立して学習していけることも大切です。このことからも、養護教諭になりたいという強い意志と努力が、かなり必要だと思います

 学校や教育についての知識や理解は、教育学部と比べるとかなり経験値不足だと思います。教育実習も最低限あると思いますが、病棟での看護実習がほとんど。普段から子供とかかわる機会がない人は、子供への接し方に悩むこともあるかもしれません。私もボランティアやアルバイトなどで、子供とかかわる機会を積極的に作りました。教員採用試験が不合格だった場合、看護師として働くのか、講師として働いて再度チャレンジするのか、いろんな選択肢が持てるので、その分事前にしっかり考えておくことも必要ですね。

 

③心理学・福祉学系の学部

★メリット

 近年子供のメンタルヘルスについての課題も多く、現場でも悩みを抱えた子供への対応をしていくことは多々あります。保健室登校不登校の児童生徒は、より専門的な立場からの介入が必要になることも。学校内だけでは解決できない子供の健康課題もあり、家庭や地域と連携して解決していくために、適切な支援につなげるコーディネーターのような役割が、養護教諭には求められています。子供の「心のケア」の早期発見や対応が適切にできるため、心理学・福祉学に関する知識と経験のある養護教諭は、今後もますますニーズが高まっていくと考えられます。

 

★考えておきたいポイント

 ①と似た内容になりますが、救急処置や緊急時の判断や対応について、少し経験が不足してしまうのかなと感じます。

 

実際に学校現場や教員採用採用試験を経験して

 私自身は、看護学科+教職課程を履修して養護教諭一種免許状を取得しました。正直、ただでさえ忙しい看護師になるための勉強にプラスして教職の勉強をこなすのはかなり大変でした。大学時代が人生で一番勉強していたと思います(笑)それなりに勉強も頑張っていないと、そもそも教職を履修するのに人数制限があったため、1回生のうちからコツコツ頑張りました。もちろん、アルバイトや旅行もたくさんしました。自分の時間の使い方次第で、遊びも充実させることができます♪

 学校現場に出て感じることは、看護師免許を持っていると、ただそれだけで、市内の養護教諭からも教職員からも一目置かれた感じに見られます。実際、緊迫感のある対応では、心を落ち着かせ、焦りをなるべく顔に出さないよう、冷静に判断できるように心がけています。心中はドキドキです・・・養護教諭ではなく、経験を積まれた先生方のほうが、テキパキ動いてくれる印象で、たくさんフォローもしてくださいます。まだまだ養護教諭として精進していく必要があるなと感じていますが、私は看護系学部で学んで養護教諭になって、良かったなと心から思っています。ただ、学校現場のシステムや常識的なことがあまり分からず現場に出たので、誰に何を聞いていのかも分からないし、初任の時は大変でした。教育学部だったらもっと「学校」という場所に慣れていたのかな・・・?また、指導案の書き方なども、養護実習でしか触れたことがなかったので、初任者の研究授業の時は苦労しました。

 

【結論】なりたい養護教諭像・理想の学校生活を考えて決める

 主に3パターンの学科からすすむメリットと考えておきたいことを紹介してみましたが、授業、生徒指導、救急処置、心のケアやカウンセリング能力など・・・自分がどれに力を入れたいか(興味があるか)、どんな養護教諭になりたいかという理想の養護教諭像を一度じっくり考えてみると、進路を決めるヒントになりやすいと思います。特定の学部や学科を選んだからといって、教員採用試験に合格する可能性や養護教諭の仕事内容は変わりません。それに、所定の科目を履修しなければ養護教諭にはなれませんし、一定水準のことはどこでも学びますのでご安心を。アルバイトやボランティアで子供とかかわる機会を作るとか、普通救命講習を受講するとか、自分の努力次第でカバーできるものもたくさんあります。そして、いざ働き始めると研修も盛りだくさんで、たくさん知識や技術を実践とともに、身に着けていくことができますよ。

 もう一つは、自分の住んでいる地域によっても、選択肢が絞られる人もいると思います。実家から通うのか、一人暮らしをするのか、住みたい地域があるのか、自分のプライベートなことなども考慮しながら進路を決めていくことも大切です。理想の学校生活が送れる選択ができるといいですね。

 

最後に

 今回は、養護教諭になりたいと考える多くの人が悩むであろう、「養護教諭を目指すには、やっぱり教育学部にすすんだほうが有利なのか?」という疑問を少しでも解決できるように、それぞれの学部から進む特徴などをまとめてみました。自分のなりたい養護教諭像や住んでいる・住みたい地域などを考慮しながら、進路を決めるヒントになれば幸いです。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。